2011年09月12日

本店の住所の決め方(1)

Q:法人の本店住所はどのように決めたらよいでしょうか?

A:住所は最初から決まっているのだから、決め方も何もないだろう、正しく記載すればよい、と思われたかもしれません。しかし、住所の表示の仕方をきちんと理解している人はほとんどいません。

まず、基本から。

住所をどのように表示しようと勝手である。

これはどういうことでしょうか?「東京都千代田区大手町1−1−1」という住所があるとしましょう。これ以外ないのではないか、と思われるかもしれません。この場合、会社の本店所在地としては次のような表示が考えられます。

1.東京都千代田区大手町1−1−1
2.東京都千代田区大手町1丁目1−1
3.東京都千代田区大手町1丁目1番−1
4.東京都千代田区大手町1丁目1番1号
5.東京都千代田区大手町一丁目1−1
6.東京都千代田区大手町一丁目1番1号


上記、どれを採用しても登記はできます。法務局から、「この住所の表示は間違いです」と言われることはありません。ではどれを選ぶべきでしょうか?結論から言えばどれでもよいと言っても過言ではありません。

住所というのは、単純に「郵便物のためにある」と考えて構いません。ですから、上記どれかで登記すれば郵便物は届きますから、問題はないと言えるのです。

しかし、法的にはどれが正解なのでしょうか?答えは6番目。一番最後の住所です。

住所の表記方法は住居表示が実施されている地域(都市部)とそうでない地域(郡部)で異なるルールが存在しています。いわゆる都市部であれば、住居表示が実施されています。住居表示が実施されている地域というのは必ず「丁目」がついていますからすぐにわかります。根拠法を示します。「住居表示に関する法律」という法律です。

(住居表示の原則)
第二条  市街地にある住所若しくは居所又は事務所、事業所その他これらに類する施設の所在する場所(以下「住居」という。)を表示するには、都道府県、郡、市(特別区を含む。以下同じ。)、区(地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の二十 の区をいう。)及び町村の名称を冠するほか、次の各号のいずれかの方法によるものとする。
一  街区方式 市町村内の町又は字の名称並びに当該町又は字の区域を道路、鉄道若しくは軌道の線路その他の恒久的な施設又は河川、水路等によつて区画した場合におけるその区画された地域(以下「街区」という。)につけられる符号(以下「街区符号」という。)及び当該街区内にある建物その他の工作物につけられる住居表示のための番号(以下「住居番号」という。)を用いて表示する方法をいう。
二  道路方式 市町村内の道路の名称及び当該道路に接し、又は当該道路に通ずる通路を有する建物その他の工作物につけられる住居番号を用いて表示する方法をいう。


「住居」表示ですから、建物に対して付けられるわけです。田舎だと建物がない部分が多いので住居表示には適しません。上記では二つ書かれていますが、基本的に「街区方式」になります。街区符号というのは○番にあたる部分、住居番号は最後の数字ですね。

丁目の部分の数字ですが、日本は漢字の国ですから、「三丁目」と書くのが正式。「3丁目」ではありません。

会社本店所在地を登記する場合、正式な住居表示で登記しなければならないという決まりはないので、「1−1−1」と書いても登記は通ります。ただ、私たちのような仕事をしている人から見ると、若干素人っぽく見えることもあります。つまり、「この会社、住居表示を知らないのかな」ということです。迷うのなら法的に正しい表記、つまり「○丁目○番○号」にしておけば問題ありません。こういうところで素人とプロの差が出るとも言えますね。

部屋番号や建物名を入れるべきかどうかですが、これも決まりはありません。「1−1−1−203」で郵便物が届くのなら問題ありません。「1−1−1 ○○ビル203号」としても可です。建物名が入っている方が営業上、お客様に対して親切であるとも言えます。

住居表示が実施されていない地域の住所の決め方については次回説明します。


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posted by 高橋衛 at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人の知識

2011年09月04日

1株の発行価額、発行株式数

Q:株式会社の株式は1株5万円で発行すると聞いたことがあります。これは決まっているのですよね?

A:いいえ、決まっていません。現在1株をいくらで発行するかは全くの自由です。

以前は株式というものは額面株式と無額面株式の2種類がありました。額面株式というのはお札のように、株券に「1株 1万円」とか「5株 5万円」とか書いてあるもの、無額面株式というのは単に「100株券」という形で株数だけが書いてあるものです。

今現在、額面株式という概念は会社法にありません。株式の価値は日々変わっているのですから(公開されているトヨタやホンダの株の価格は日々変動していますよね)、1株いくら、と記載することは意味がないということです。毎日あるいは1秒ごとに書き換える必要があるということになるからです。

このような考え方から、1株=いくらという額面株式というものは会社法成立とともに消滅したのです。ちなみに未だに額面株式が存在していると考えている経営者は少なくありません(年配の方ですと、説得するのが大変です)。

額面株式が存在しませんから、資本金は次のようになります。

1株の発行金額(発行価額という)×発行株式数=資本金

=にならないやり方もありますが、それは考えなくて結構です。上記の式で考えて構いません。

昔ですと、例えば資本金300万の場合は、

5万円×60株=300万 と一律に決まっていたわけです。

ところが現在は、

1万円×300株=300万 としても良いし、
100万円×3株=300万 としてもかまいません。

ではどうすべきなのか、ということですが、基本的な考え方を伝授しておきます。

特段の理由がない限り、発行する株式数はできるだけ少なくする

これはどういうことかと言いますと、相続を考えてもらえばわかります。

上記の例で300株発行しますと、相続の度に株式が多くの人にばらけてしまいます。3人兄弟が平等に引き継げば100株ずつ持ちます。その下の代になると、配偶者やら子供やらで二桁の人数になります。株主の管理だけでも大変です。

こうなると経営者は落ち着いて経営できません。株を持っている人が絶対的権力者ですから、常に顔色をうかがう必要がでてきます。これは好ましい状況ではありません。

ところが1株しか発行しなかったとします。1株300万です。こうしますと、その一株は、次の経営者が引き継ぐことになるのが普通。そうなれば兄弟が何人いようと問題は起きません。一子相伝が可能になります。血縁関係のない人に譲渡する場合も非常にスムーズです。

ですから昔ながらのやり方で、深く考えずに安易に1株5万円で発行すれば良いというものでは決してありません。非常に安易に設立している株式会社を多く見受けます。素人とプロの違いはこういうところに現れます。

将来どうなるかわからない、という人もいるでしょう。そういう場合は極力株数を少なくすべきです。1株でも何ら問題はないことを知っておいて下さい。後で株式を分割し、増やすことはできますから、心配はいりません。私の場合、1株100万で数株だけ発行するという形で設立することもよくあります。

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posted by 高橋衛 at 12:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人の知識

2011年09月01日

角印

Q:法人の角印とはどういう印鑑のことですか?どういう場面で押すのでしょうか?

A:以前、代表印のところで少し触れましたが、改めて説明しておきましょう。

角印というのは文字通り、四角い印鑑です。正方形です。一辺の長さが21ミリか24ミリで作られます。文字は篆書(てんしょ)の細字が一般的。

角印は必ず作成しなければならないものではありません。法的な義務は全くありません。作成せずとも何ら問題はありません。

ではなぜ作成し、使う企業があるのか、ということですが、次のような理由があると思います。

@代表印は重要な印鑑なので、滅多に押すべきではない。角印で代用できるなら代用すべきである。
A角印と代表印を二つセットで押印するとそれらしく見える
B代表印ではないが、それらしいので、代表印を押したくないときに代表印に代えて押してごまかすことが出来る。



@ですが、これは正しいと思います。代表印は法務局に届け出てある印鑑ですから、いたずらに第三者の目にさらすべきではないという考え方があります。偽造されるおそれがあるからです。また代表印を頻繁に使うと、印鑑がすり減ってしまい、印鑑証明書を取った場合、これと異なってしまう(現実にあります)という問題が発生しかねません。
そういう理由で、特に問題ないときは角印を押すという企業は多くあります。具体的には見積書、領収書などに押す場合が多いと思います。ただ、契約書など法人としての意思を明確にすべき場合には代表印を押すべきであるのは言うまでもありません。
ですから、相手の意思を確実に確認したいときは、必ず代表印が押されていることを確認して下さい。角印ではダメです。

Aについては見た目の問題です。角印と代表印二つ合わせてフルセットになり、これが一番好ましいと思いこんでいる人もたくさんいます。法的には代表印があれば必要十分なので、角印は「かざり」にすぎないわけですが、「角印もお願いします」と言われることもあります。

Bについては角印があればそれらしく見えるので、あいまいにしておきたいとき、後で逃げたいときなどに、「あえて」角印だけを押して代表印を押さず、ごまかしている例を散見します。いついつまでにお金を払います、などという債務の承諾書のような書類でよく見ます。とりあえずこれで追求をかわしたいが、払えるかどうかわからないから、あいまいにしておきたい、ということです。
代表印を押せば、会社の真正な意思表示と解釈できますから、逃げられません。しかし角印は法的な裏付けがない印鑑ですから、逃げようと思えば逃げられると考えるわけです。
しかし、訴訟などになった場合に、「角印だから本当の意思ではありません」と言えるかどうかは別問題です。角印を押したという行為があるわけですから。

このように角印はあったらあったで便利ですが、なくてもさして困らないという印鑑です。自分の事業において必要な場面があるのかないのか見極めて作成するか否かを決めて下さい。

法人印鑑3本セット、などと宣伝をよく見ますが、よく考えてから発注して下さいね。

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posted by 高橋衛 at 08:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人の知識

2011年08月27日

取締役の人数

Q:株式会社を設立しようと考えていますが、取締役は最低何人必要なのでしょうか?

A:簡単です。一名です。これで終わりにしても良いのですが、あまりに芸がないので少し説明します。

まず会社法上の規定から。

第三百二十六条  株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。

第三十九条  設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合には、設立時取締役は、三人以上でなければならない。




ちょっと年配の方ですと、「取締役は3人以上必要だ」と言われる方も未だにいらっしゃいます。これは以前、そのような規定があったためです。今はそのような規定はありません。参考までに昔の商法の規定を掲げておきます。以前はカタカナでした。

第二百五十五条  取締役ハ三人以上タルコトヲ要ス


いやいや上の39条に三人以上と書いてあるではないか、と言われそうですが、条件があります。「取締役会設置会社である場合には」と書いてあります。

取締役会はすべての株式会社にあるはずだと、これまたちょっと年配の方に言われそうですが、これも現在は任意です。一般的に中小企業では取締役会のない株式会社として設立する方が圧倒的に多数で、取締役会のある中小企業はかなり以前に設立された会社(現在の会社法施行前に設立された会社)と考えて間違いありません。

そういう現状ですから、これから設立する場合は、通常(個人レベルで開業するような場合)は取締役会を設置しないと覚えておいてかまいません。ですから、普通39条が適用される場面はほぼないと思います
(注意:もちろん取締役会を設置することは問題ありませんし、状況によっては設置した方がよい場合もあります)。

取締役の人数は株式の譲渡制限に関する規定を置くか否かによっても変わりますが、これは譲渡制限の規定の回で説明します。

とりあえず、取締役会を置かないのなら、一名でよい、と覚えておけば間違いありません。

余談ですが、法的には「一名」と書くべきで「1名」ではありません。条文をよく見て下さいね(間違いとまでは言えませんが・・)。

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2011年01月21日

NPOの資本金

Q:NPOには資本金がないのですか?

A:NPO(特定非営利活動法人)を設立する場合、定款(ていかん)に資本金に関する項目はありません。財産目録というものを作成しますが、それも「0」でかまいません。つまり資本金ゼロで設立できることになります。

当然ですが、NPOとして事業を行う場合、資本金(元手)が必要なことは他の法人格である株式会社などと同じです。つまり、ゼロで設立できるということは、ゼロで運営できることを意味しません

NPOであっても資本金は必要です。必要額の計算方法は株式会社などの場合と同じです。このブログで検索してみて下さい。

経理的には資本金があるものとして経理をしてかまいません。最初300万を資本金にしようと考えれば、300万を通帳に入金し、次のように仕訳をすればかまいません。

普通預金 300/資本金 300

資本金がいくらであるということは定款上にもどこにも決まっていませんが、自分で決めてかまいません。

上記の例では300万を入れるが、100万は法人に対する貸付にしようということで次のようにしてもかまいません。

普通預金 100/役員借入金 100
普通預金 200/資本金 200

このようにすると、100万は利益が出た後、回収することが可能となります。法人から見ると、借りた物を返すだけです。

そのように考えると次のようにしてもかまいません。

普通預金 300/役員借入金 300

資本金はゼロですが、役員借入金を資本金と考えればよいということです。実質的な意味で考えれば問題はないと言ってもよいでしょう。

資本金の額は損益には関係しませんから、税務上も特に問題になることはありません。

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2011年01月19日

資本金は戻らない?

Q:資本金は一旦会社に入れたら、戻ってこないのでしょうか。

A:たまに聞かれる質問です。結論から言いますと残念ながら、戻ってきません。資本金を500万で会社を設立、その後これを戻そうと思い、500万引き出したらどうなるのでしょうか?これは単純に役員に対する貸付金となるだけで、資本金そのものが減るわけではありません。

法律上(会社法上)、減資という手続きを取れば資本金は減らすことができますが、通常行われることはありません。企業再生の場面で使われることがほとんどです。深く考えずに減資などをすれば、倒産したと思われます。

資本金が戻ってこないのならば、あまり資本金として会社に入れたくないと思われるかもしれません。しかしながら資本金を少なめにしていいことは何もありません。端的に言って倒産の危険性が増すことになります。

戻ってこないというと、損をしたように感じられるかもしれませんが、損をするわけではありません。資本金を会社に投入することによって安定して経営をすることができます。その結果、あなたは役員報酬や配当金という形で間接的に資本金を回収することができるわけです。ですから、直接は戻せないが、間接的には戻ってくると考えれば良いことになります。利息を得ようと思えば元本を預けなければなりません。それと同じ事であると考えてください。

しつこいようですが、適正な資本金で会社を設立することは重要なことです。適当に「500万だともったいないから300万ぐらいにしておこう」などという発想は極めて危険なのだということを肝に銘じてください。減らした分だけ資金繰りの悩みが増すと考えるべきです。

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posted by 高橋衛 at 22:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人の知識

2011年01月14日

資本金の額

Q:資本金は1円でもよいと聞きましたが、いくらにしたらよいのですか?

A:これは会社の規模によります。規模というのは簡単に言えば年商と言ってかまいません。1円でもよいということで、1円で設立するとどうなるでしょうか?

1.1円の資本金ということで、信用されない(いろんな書類に書くことになります)
2.資金繰りがつかない(1円では運営できるわけがない)
3.足りないお金は借入金でまかなうことになり、無駄な経費(利息)が発生する

以上のように、いいことは全くありません。はっきり言えば、

資本金は多いことに越したことはない

ということです。簡単な目安としては、以前も説明しましたが、

必要な資本金の額=年商÷4

と覚えて下さい。年商2000万を想定しているのなら、資本金は最低でも500万必要となります。これは資金繰りの面、すなわち安定して事業を運営するためにはいくら必要か、という視点で検討した場合の数字です。安易に資本金を決めますと(実際そういう方が多いのですが)、事業運営に支障を来します。

私が設立を請け負う場合は、個人事業時代の損益計算書、貸借対照表を見た上で、適正な額を算出しています(法人成りの場合。新規開業の場合は予算額を元に計算)。「一般的にどのくらいの額が適当ですか?」と聞かれることが多いのですが、「一般的」に決めるものではなく、相場があるわけでもなく、「あなたの事業規模、内容」に応じて決めるべきものです。

税務という視点で検討した場合はどうでしょうか?資本金が1000万以上で設立すると、消費税の免税という特典がなくなってしまいます。

逆の言い方をしますと、資本金を1000万未満で設立しますと、設立から2期は消費税を納めなくてよい、ということです。なぜそうなるかは説明しませんが、結果だけ覚えておいて下さい。

もう一つ。株式会社を設立するときは、登録免許税を支払います。これは最低15万円です。資本金が300万でも1000万でも同じです。資本金に0.7%を掛けた額が15万未満なら、15万になります。つまり、

150000÷0.007=約2143万 以下の資本金の場合は資本金の額にかかわらず、常に15万払わなければなりません。

何が言いたいかといいますと、最初資本金100万で設立し、その後増資(資本金を増やすこと)をして500万にしたとします。そうなると、追加の400万に対して0.7%の28000円を払わないといけません。

後から細かく増資をするくらいなら、最初から多めにしておけば費用がかからないということです。

上記の例で言いますと、100万で設立したときに15万円払います。400万増資したときにまた28000円払います。合計で17万8千円払います。しかし、最初から資本金500万で設立した場合は、15万で済みます。要するに登録免許税15万円の枠があるので、どうせ15万払うのなら、目一杯その枠を使った方が得ということです。もちろん増資をするつもりがないのなら、このようなことを考える必要はありません。

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posted by 高橋衛 at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人の知識

2011年01月13日

資本金は使ってはいけない?

Q:法人に資本金を入れると、その資本金は使わずに置いておかないといけないのでしょうか?

A:資本金についてよく聞かれる質問です。法人を設立して資本金を入れると、その資本金に手を付けてはいけない、定期か何かにしておかないといけないと思っている方が多くいらっしゃいます。結論から言うと、そんなことはありません

例えば資本金500万で株式会社を設立したとしましょう。法人の登記が完了し、法人名義で通帳を作ります。資本金をまず全額通帳に入れるとすれば、この通帳の一行目には、500万の入金が記載されるはずです。この500万円に手を付けてはいけないのか、ということです。

資本金とは手を付けずに置いておかないといけないお金のことではありません。資本金で物を買ったり、支払をしたりして何ら問題はありません。日々の運営に使うべきお金です。では資本金500万なのに一時的にでも減ってしまって大丈夫なのか、と心配されると思います。これは大丈夫なのです。

資本金は現金や売掛金、あるいは機械など形を変えて残っています。もちろん、赤字を出せば、実質的に資本金は500万を下回ることもありますが、1円でも利益を出していれば、資本金は形を変えているだけで、残っているのです。つまり

資本金は現金の残高ではない

ということです。例えば1年間経営して次のようになったとしましょう。50万の利益を出したと仮定します。

現金 200万
売掛金100万
商品 100万
機械 100万
車   50万

全部で550万になりますね。現金としては200万ですが、この時点で廃業し、全てを現金に換えれば550万になります。資本金の500万は残っていますね。

つまり資本金は最初は現金の残高と一致しますが、事業が始まると、とたんにいろんな形に変わっていってしまうのです。それは決して無くなっていることを意味するわけではないのです。
現預金だけを見ると、「資本金がなくなってしまった」ように見えますが、それは錯覚です。現金がなくなったこと=資本金がなくなったということではないのです。

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posted by 高橋衛 at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人の知識

2010年12月23日

会社の役員

Q:会社の役員は会社に雇用されているのではないのですか?

A:違います。会社の役員(例えば取締役)は会社に雇用されているわけではありません。会社との関係はどのようなものなのかというと、これは委任契約になります。株式会社を念頭に置いて話をします。

会社法に規定があります。

(株式会社と役員等との関係)
第三百三十条  株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。


まずは雇用の規定から復習しましょう。民法に規定があります。

(雇用)
第六百二十三条  雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

取締役だって労働しているのだから、雇用ではないのか?と思われても仕方ありませんが、取締役は労働者ではありません。雇用されているわけではなく、どちらかというと雇用「する」方ですね。

ではそもそも委任契約とはどういうものか?民法に規定があります。

(委任)
第六百四十三条  委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。


(受任者の注意義務)
第六百四十四条  受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。



簡単に言うと、何かを頼む、ということです。これが委任ですね。では誰が取締役に取締役としての業務を頼んでいるのでしょうか?そうです、株主です。つまり、

株主が取締役に対して会社の経営を頼んでいる

という関係になります。株主が取締役を雇用しているわけではありません。雇用しているのであれば株主は取締役を労災に入れたり、雇用契約をしなければならなくなります。そんなことはしていません。

上記の644条は大事な条文ですが、これを元に株主と取締役の関係を考えると、

受任者たる取締役は、(株主の)委任の意図を十分くみ取って、ちゃんと注意を払って会社経営をする義務を負っている。

ということになります。株主が圧倒的に偉いということです。取締役は株主から経営を任されているにすぎませんから、株主は取締役を辞めさせたりすることができます。雇用ではありませんから、解雇ではありません。解任といいます。会社法に規定があります。

(解任)
第三百三十九条  役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。(以下略)


取締役の立場というのは、かなり危ういと言っても過言ではありません。株主の一存ですぐ首にされる可能性が常にあるわけです。「いつでも」という言葉が入れてあるのは意味があってのことです。

ちなみに委任契約は原則無償です。

(受任者の報酬)
第六百四十八条  受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。


受任者=取締役や監査役を指します。委任者は株主ですね。取締役は原則無償で働くのが原則なのです。役員報酬はあくまで委任の対価であって給与(賃金)ではありませんから、最低賃金法などの制約は受けません。

取締役の給与は基本的に委任者たる株主が決定します。当然ですね。中小企業の場合は取締役=株主のことが多いので問題になることはまずないと思われます。

(取締役の報酬等)
第三百六十一条  取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。(以下略)


それでは役員報酬は事業としての所得なのでしょうか?それとも給与としての所得なのでしょうか?これは税法上給与所得として扱います。社会保険などの面でも同様に給与として扱います。会社と役員の関係は委任契約だが、税務上や社会保険の手続きとしては給与として扱うという二面性があることを知っておきましょう。

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posted by 高橋衛 at 14:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人の知識

2010年12月12日

代表印

Q:会社の代表印とはどのような印鑑のことを言うのですか?

A:代表印とは、法務局に届け出て登録された法人の印鑑のことを指します。「○○株式会社代表取締役の印」と書いてあっても、登録されていないものは代表印ではありません。根拠は商業登記法です。

(印鑑の提出)
第二十条  登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない。改印したときも、同様とする。
(以下略)

実際の手続きについては商業登記規則に規定があります。

(印鑑の提出等)
第九条  印鑑の提出は、当該印鑑を明らかにした書面をもつてしなければならない。この場合においては、次の各号に掲げる印鑑を提出する者は、その書面にそれぞれ当該各号に定める事項(以下「印鑑届出事項」という。)のほか、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載し、押印しなければならない。
(中略)
3  印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。
4  印鑑は、照合に適するものでなければならない。
(以下略)

大きさの制限があるなどの点は個人の実印と同じですね。個人の実印よりは少し大きめな印鑑を想定しています。

代表印は法務局に登録された印鑑ですから、これも個人の実印と同じように印鑑証明書を取ることが出来ます。個人も法人も印鑑(登録)カードを発行してもらい、これを添付することで印鑑証明書を発行してもらうことが出来る点は同じです。

その意味では印鑑(登録)カードそのものが代表印と同じ意味を持ちますから、厳重に管理しておくべきです。

代表印は代表者毎に登録することもできます。個人と異なり、会社によっては複数の代表印が存在します。特に大企業の場合は複数の印鑑登録がされていることは珍しくありません。

また代表印は丸印にしなければならないということはありません。また個人と違い、どのような内容が彫ってあってもかまいません。社名を入れなければならないとか、周りに会社名をいれなければならないということもありません。ですから個人名が彫ってある印鑑を会社の代表印にしてもかまいません(制限する規定がないからです)。

ただ、一般的に代表印として想定される印鑑ではない印鑑(例えば角印で個人名が彫ってある物)を代表印とした場合、いちいち「これは代表印ですか??」と聞かれることになり、そのたびに「これは角印ですが、ちゃんと代表印として登録してあります!」と答えなければなりません。
代表印についてはきちんとした知識のない人がほとんどですから、代表印=丸印と認識している人の場合、非常にやっかいになります。そのような意味で、ある程度一般的な代表印を作ることをお勧めします。

代表印を銀行印などと兼用することも特に問題ありません。但し、代表印を頻繁に使いますと、印鑑が欠けたり、すり減ったりして、いざというときに、「印鑑証明書の印鑑と違う」と言われかねません。そのような意味においては、別にしておく方が賢明と言えます。

またあちこちに代表印を押し、第三者の目にさらすことは偽造されてしまう可能性もないとは言えません。会社の正式な意思表示としたいが、代表印はあまりみだりに押したくはないという場合は、次の角印を検討してください。

角印は文字通り、正方形の印鑑です。これは特に法律で規制されたものではありませんから、全く任意の印鑑になります。経費を抑えたければ作らなくてもかまいません。ただ代表印を押す代わりに、角印で代用するということは請求書発行などの場合には広く行われていることですので、使用する場面が想定される場合は、一緒に角印も作っておいてもかまいません。

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2010年10月07日

NPO法人での独立

Q:NPO法人(特定非営利活動法人)の設立を考えていますが、NPO法人で普通に商売してもいいのでしょうか?

A:特に問題ありません。
NPO法人(特定非営利活動法人)を設立する際の注意点については別途まとめますが、NPO法人で普通の会社と同じように商売することは何ら問題がありません。

特定「非営利」ではないのか?という疑問があると思います。法人はNPO法人に限らず、設立の際にこの法人は何をやるのかということ(目的といいます)を明記しなければなりません。NPO法人の場合は、この目的が「非営利」でなければならない、ということなのです。つまり、

非営利な目的を達成するために、営利な事業をやることは問題がない

ということです。当然です。非営利な目的を達成するための活動を行うためにはお金が必要ですから、そのために営利事業を行うことは当たり前のことです。非営利なこと、すなわちボランティアだけをやっていればNPOであっても資金が枯渇し、倒産してしまいます。ただし、目的はあくまで非営利ですから、出資者に配当を出したり(そもそもNPOに出資者はいないのですが)、役員を家族で固めてしまうなどということはできません。一定の制約はあります。

営利事業を行うことが禁止されているわけではありませんから、法人税なども普通の会社と同じように支払います。法人県民税、法人市民税も同じです。社会保険、労働保険も同じです。税金面等で何か特典がありそうな気がしますが、ないと考えて下さい(地方によっては多少あるかもしれません)。運営面では株式会社などと同じと考えて下さい。逆に税金面などで優遇措置があったとしたら、NPOを隠れ蓑して事業を行う人が横行してしまいますよね。そのようなことは認めない、という主旨です。

しかしながら大きく異なる点の一つは、決算書が公開されることです。県の担当部署に行けば誰でもNPOの決算書を見ることができます。

また県に毎年度毎に予算と決算報告を行わなければならず、また設立時にも県がチェックし、県がOKを出さない限り設立できません。このように頻繁に県との接触があります。そういった面では通常の株式会社などよりは面倒です。

NPO法人は福祉などの目的で設立されることが多いのですが、福祉と言っても事業であることには変わりありません。福祉=ボランティアではありません。皆さんもお気づきのように、介護事業はNPO法人でも通常の株式会社でもできます。ではなぜNPOにするのかと言えば、断言は出来ませんが、対外的な印象という側面が大きいと思います。福祉的なことをするにはNPOの方が受けがいい、ということです。

NPO法人を事業として設立しようと考えていらっしゃる方は、なぜNPOにしなければならないのか、株式会社などでは本当にダメなのか、よく検討することをお勧めします。

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posted by 高橋衛 at 10:17| Comment(0) | 法人の知識

2010年10月05日

法人とは?

Q:法人とはなんですか。

A:よく法人と個人のどちらがいいのか、という話がありますが(それは別途お話します)、その前提として法人についてまず理解しておきましょう。

法人とは何らかの法律に基づいて設立された組織を言います。必ず法律上の根拠があります。個人で商売を始めても個人は個人ですから、屋号(商号)を付けた事業体が生まれたとしても、それが自動的に法人になるわけではありません。

この大原則を決めているのが民法33条です。
(法人の成立等)
第三十三条  法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。
(以下略)

株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、合同会社は「会社法」に基づいて設立されています。有限会社は元は「有限会社法」に基づいていましたが、会社法が出来て、これに吸収されるような形で今はなくなっています(細かな法律の関係は説明を省きます)。ですから有限会社の根拠法は現在、会社法です(有限会社は法律上、株式会社なのです)。

ちなみに個人で商売を始めたのに、「株式会社○○」と名乗ることはできません。これは法律違反となります。わからないだろうと思われるかもしれませんが、誰でも調べればすぐにわかります。このようなことは決してやってはいけません。

NPOというものもあります。これは「特定非営利活動法人」というもので根拠法は「特定非営利活動促進法」という法律です。NPOは非営利とはなっていますが、通常の株式会社などと同様に利益を上げることも可能です。利益を出してはいけないと考えている人もいらっしゃいますが、それは誤りです(NPOについてはいずれ改めてご説明します)。

医療法人、財団法人、社団法人、宗教法人・・・他にも沢山の法人があります。企業組合というものもあります(中小企業等協同組合法が根拠)。

法人はすべて法律に根拠がありますから、法律が求めている要件を満たさないと設立できません。誰かが法律に基づいているかどうかをチェックするということになります。この誰かは基本的に「お役所」です。つまりお役所に必要な書類を持って行き、チェックを受けるということです。

そうやってお役所のチェックに合格し、設立された法人は個人(法人に対して自然人ということがあります)と同じように権利義務の主体となることができます。納税の義務も生じます。人ではないけれど、人と同じように捉えることが可能なもの、という具合に考えればよいでしょう。法人であることを、「法人格がある」という言い方をする場合もあります。

これを表しているのが民法34条です。結構有名な条文ですね。
(法人の能力)
第三十四条  法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。


法人とはなんぞやということについては法律上いろんな考え方(学説)がありますが、それを知る必要はありません。上記のような理解でかまわないと思います。

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posted by 高橋衛 at 23:40| Comment(0) | 法人の知識