2010年11月21日

正社員・契約社員・パート

Q:正社員と契約社員、パート、アルバイトの違いを教えて下さい。

A:これらの用語の違いを見つけようと、一生懸命になっている人を見かけますが、これらの用語はどれも法律上の用語ではありません。ということはすべて俗な言葉です。俗に言う「契約社員」としか言いようがありません。一般に「なんとなく」区別がされていますが、気にする必要はありません。

法律上の用語ではありませんから、それぞれの正確な定義もありません。パートであっても雇用契約をしているわけですから、契約社員と言ってもかまいません(すべての労働者は契約して働いているので、全員契約社員と言っても間違いではありません)。つまり、

誰をどう呼ぶかは、その会社が独自に(勝手に)決めて良い

ということです。もっと言えば、契約社員とパートの違いを見つけたところで何の意味もありません。分ける実益はないと言うべきです。

契約社員と呼ぼうがパートと呼ぼうが、労働基準法は全く同じように適用されますし、それらを区別している規定もありません。パートとアルバイトなど区別しても全く意味はありません。

法律上、区分するのは、どのように呼ばれているかではなく、

どれくらいの労働時間なのか、どれくらいの契約期間なのか、

という部分だけです。時間が短い人については、法令上「短時間労働者」という用語があります。「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」というものもあります。労働法上、呼び方や分類に影響されるような場面は全くありません。

面倒であれば、全員を正社員と呼んでも一向にかまいません。「時間の長い正社員もいるし、時間の短い正社員もいる」という認識で問題ありません。敢えて呼称を変える必要性はありません。

ですから、時間の短い人を「準社員」と呼んだりしても何ら問題はありません。みなさんが自由に決めればよいことです。

ただすべてを一律に扱うことは出来ないという人事上の問題はあります。人事制度の上で区分する必要があれば、呼称を変えることも意味があることだと思いますが、「どう呼ばれるか」は社員のやる気に繋がる部分もありますので、パートやアルバイトという呼び方は軽く扱われている印象があるので出来たら使わない方がよいと思います。

実際、正社員よりできるパートさんがいることは珍しくなく、パート=補助=能力が低い、と考えるのであれば、それは完全に間違いであると言えます。働く時間数と能力は何の関連性もないことを認識しましょう。

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posted by 高橋衛 at 15:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 雇用に関する知識

2010年11月20日

社会保険加入基準

Q:社会保険に加入しなければならない人はどのような人ですか?

A:社会保険に入っている事業所(適用事業所といいます)に勤めている人が全員対象になるわけではないことは雇用保険と同じです。加入基準は、

いわゆるフルタイムの人の4分の3以上働いていること

と覚えてもらって構いません。パートだから加入しない(したくない)ということはできません。パートでもこの基準を満たせば加入しなければなりません。本人が嫌と言っても加入させられます。希望を聞く場面はありません。入りたいから入る、入りたくないから入らない、そのようなわがままは認められないことに注意して下さい。

4分の3という数字をまず覚えて下さいね。では4分の3というのは、具体的にどう計算するのか、ですが、これも「所定」労働時間を基準に考えます。契約書上の時間です。もう少し正確に書きますと、

いわゆるフルタイムの所定労働時間の4分の3以上の所定労働時間であって、かつ、いわゆるフルタイムの所定労働日数の4分の3以上

時間と日数の両方を満たすと、加入することになります。

ですから、まずはフルタイムの人(一般には正社員と呼ばれている人)の所定労働時間が決まっていないと、判定できないことになります。中小企業では意外と決まっていない(決めていない)ことも多いので、まずは、ここから決める必要があることになります。

ちょっと具体的に考えましょう。週44時間の所定労働時間の事業所があるとします。時間数でいけば、

44×3/4=33時間。1日6時間のパートさんが週5日働いたらどうなるでしょう?

週労働時間は30時間ですから、日数計算をするまでもなく加入しないことになります。ちなみに週20時間以上ですから、雇用保険には加入します。

社会保険料は非常に高額です。みなさんがどのようなパターンで人を雇用するかによって会社負担が大きく異なってくることに注意して下さい。1日6時間のパートを6日間働かせると、社会保険に加入します。1日3時間のパートを二人雇用すると、二人とも加入せずにすみます。何万円という差がここで発生します。賃金として支払う額は同じです。頭数を増やすことで負担を回避できるということを覚えておいて下さい。ただ、頭数が増えると、意思疎通などの面で障害が発生することもありますから、よく事前に考えて下さい。


時間と日数以外にも基準があります。日雇いの人などは加入できません。あくまでも「ずっと働いているような人」を対象とします。具体的に加入できないのは、

1.日雇いの人
2.2か月以内の期間で雇用する人
3.季節的な業務(4か月以内)に雇用される人


などです。ですからフルタイムで働く人であっても1か月の期間限定で雇用された場合は加入対象になりません。

よく間違いがあるのは試用期間中の扱いです。試用期間中は加入させず、試用期間が過ぎたら加入させているところが多いのですが、このような取扱いはできません。試用期間を設けているということは、ずっと働いてもらうという前提がありますから、日雇いでも2か月以内の雇用でもないことは明らかです。注意しましょう。

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posted by 高橋衛 at 11:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 雇用に関する知識

2010年11月19日

成功とは?

Q:独立した場合、何をもって成功したと言うのでしょうか?

A:独立・起業すると言う話になると「成功」という文字がいろんなところに出てきます。書籍販売サイトで「成功」と入力して検索すれば、ほとんどビジネス上の本がヒットすることからも、独立を目指す=成功を目指すということで認識されていると思います。

成功というのはいろんな意味があると思います。金銭的に裕福になる、世の中に貢献できる、お客さんに喜んでもらう・・など、何を重視するか、何を目指すかによって基準は異なってくるでしょう。

ほとんどの人は金銭的なことを考えると思いますので、まず金銭的な部分で考えましょう。

成功というと、年収数千万だの年商何十億だの、威勢のいい話がたくさんでてきますが、中小企業の世界では例外です。そのような人もいることはいますが、本当に例外です。そのような話を真に受けて、自分もそうなろうと考えるのであれば、独立すべきでありません。まず「統計学的に」実現しません。現実を直視して下さい。夢と希望を語るのは自由ですが、現実は異なります。

実際現場で見ている感覚を元に、金銭面で考えれば、私の成功の定義は次のようなものになります。

「自らが選んだ仕事で生活できるようになること」

最低限のつつましい生活ができるようになれば成功と言っていいと思います。大半の人が生活費相当分の利益を上げられずに撤退していきます。贅沢はできなくても、起業してその仕事で食べていける、というのは胸を張っていいことだと思います。「もっと上を目指すべきだ」「そんなレベルで満足してはいけない」と言われそうですが、それほど現実は甘くないのです。サラリーマン並みの生活ができる、ということはすばらしいことです。経営者=裕福な人々と考えるのであれば、その認識は間違っていると言わざるを得ません。

実際、高収入を得ている人もいます。その結果だけを見るとうらやましいと思われるかもしれませんが、一般の人以上の苦労を積み重ねた結果であることを忘れてはいけません。最初から高収入であったわけでもありません。何十年かかって積み上げてきた最後のいいところだけを見ている人が圧倒的に多いのです。経緯を考えて下さい。

収入以外の面でいえば、やはり社会に貢献できているかどうか、これも大きな要素です。社会に少しでも役に立っていると感じられることは、これだけでも十分成功と言っていいでしょう。これは、お客様に喜んでもらったという感覚と同じものです。つまりお客様に満足を与えた結果、世の中に役に立っていると感じられるわけです。

今、収入とそれ以外で区別して話をしましたが、お客様が満足していなければ、当然売上や利益も上がりません。ということは、これらはすべて繋がっている話です。

お客様の満足が、利益をもたらし、最終的には収入に繋がっていくわけです。ですから、

お客様に満足を与えることができれば成功」と言ってもかまいません。より多くのお客様に満足えることができれば、嫌でも収入は増えてきます。

どうやって収入を増やすか、どうやって稼ぐか、などということに血眼になっている人もいますが、愚かなことです。本末転倒です。どうやってお客様に喜んでもらうかに血眼になるだけでよいのです。

このような意味において、成功=多くの収入を得ること、という定義付けは結果として正しいことはあり得ますが、これを目指すというものではありません。事業の最終目的はより多くの収入を得ることではありません。より多くのお金を得ることだけが目的であれば、詐欺と事業に違いはなくなってしまいます。事業は公の物です。あなたの私的なお金量産マシンではありません。そのような位置づけをしているとするならばその事業は長続きしません。なぜならそれは事業と称する詐欺だからです。

事業は世の中をよりよくするために存在している、それ以外の理由で存在することはできない、という原点を常に意識しましょう。

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posted by 高橋衛 at 12:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 心の準備

2010年11月18日

雇用保険の加入基準

Q:雇用保険の加入基準を教えて下さい。

A:法人と個人(事業)とで違いはありませんので、その点をまず確認して下さい。これは労災も同じですね。

雇用保険は基本的には失業した場合の生活保障ですので、本来保護する必要のない人や、ちょっとした小遣い稼ぎの人まで保護する必要はないと言えます。ではどのあたりで線が引かれるのでしょうか?

まず、その人の客観的な立場で一つ線を引きます。対象外となるのは、次のような人たちです。

1.法人の役員
2.学生(夜間学生を除く)
3.同居している家族
4.65歳以上の人


要するに保護する必要がない人達、ということです。役員も働いていますが、使用者であって労働者ではありませんから対象外です(但し、形式上役員でも、実質は労働者と同じ、という場合(使用人兼務役員といいます)は加入できる場合があります)。学生というのは、昼間働いて夜学校に行く、という人は原則的に労働者ですから、この人は雇用保険に加入します。いわゆる通常の大学生などは適用外ということです。事業主の家族も、事業主と同じと見ることが出来ますから対象外となります。65歳以上の人は、もう年金をもらっているはずですから、保護する必要がありません。

ではこれ以外の人は全員雇用保険に加入するのか、というと、先ほど言ったように、ちょっとした小遣い稼ぎのような人は対象になりません。この線引きは次の通りです。

週所定労働時間が20時間未満の場合は加入しない(できない)。

よく見て下さい。「所定」労働時間です。実労働時間ではありません。あくまで、雇用契約書上で、何時間働くことになっているか、これが基準となります。例えば、契約書上で、週19時間働くことになっているが、週20時間を超えるようなこともある人はどうでしょうか?この人は雇用保険には加入しません。あくまで「所定」で判断します。

いわゆるパートさんと呼ばれる人は、契約書など作っていないことが圧倒的に多いと思います。必要なときに必要な時間だけ来てもらうから、そんなものいらないという認識ですね。このような場合は、所定労働時間を推測するしかありませんので、実労働時間から判断する以外にありません。そうなると、もし契約書で週19時間と書いてあれば雇用保険に加入せずに済んだのに、契約書がなく、大体実労働時間で平均22時間と判断されれば、加入することになってしまいます。つまり、

同じ時間働いていても、雇用契約書の有無で、雇用保険の加入判断が分かれることがある。

ということです。これは本人の負担の面、事業主の負担に差が出ることを意味します。よく考えて下さい。当然ですが、雇用保険の加入を避けるために、敢えて週所定労働時間を週19時間59分にするようなことは、脱法行為であり、認められません。所定労働時間と実労働時間があまりにかけ離れている場合は、当然、疑義を持たれます。

雇用保険の加入基準は時間数だけでしょうか?週30時間であったとしても、1週間だけのイベントに雇用されるような場合は、保護する必要がありませんね。よって雇用契約の期間によっても左右されます。基準は1か月。まとめると、次のようになります。

週所定労働時間が20時間以上であって、1か月(31日)以上雇用する契約をした場合は、加入する。

覚えておきましょう。

よく、「本人が入りたくないと言っているから」といって加入手続きを取らない会社が多くあります。上記の基準を満たせば、本人の希望にかかわらず加入しないといけません。雇用保険や社会保険の場面で本人の希望を聞く場面はありません。有無を言わさず、ということです。

ですから、こういうことは最初雇用する段階で、きちんと説明しておくべきことなのです。「あなたは雇用保険に加入することになるので、あなたの希望がどうあれ、雇用保険料は天引きします。それでいいですね?」と確認すればよいのです。天引きが嫌なら、雇用はできないとはっきり告げるべきと考えます。

加入しなくてもばれないだろうと思われるかもしれませんが、雇用保険も調査がありますから、発覚すれば加入させられます。当然ですね。

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posted by 高橋衛 at 09:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 雇用に関する知識

2010年11月17日

所定労働時間

Q:所定労働時間とはどういう意味ですか?

A:社員を雇用した場合、すべての社員を雇用保険や社会保険に加入させなければならないわけではありません(ちなみに労災はすべての社員が対象になります)。加入の基準があります。その基準を考える場合に前提として、労働時間についての用語・概念を知っておく必要があります。

労働時間の話をする場合はいろんな用語が出てきますので、これを整理します。

1.法定労働時間
2.所定労働時間
3.実労働時間
4.残業時間


まずは法定労働時間。言葉の通り、法律で定められた労働時間です。週40時間や一日8時間などの時間のことです。この時間を超えて働かせると違法です。36協定を提出していれば、違法性は免れます(このブログ内で「36協定」を検索してみて下さい)。

(労働時間)
第三十二条  使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2  使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

この基準法の規程には例外などもあるのですが、その説明はいずれやります。

次の所定労働時間。「所定」がポイント。この所定労働時間の意味するところは、「雇用契約上、本来働くべき時間」という意味です。ですから、一日7時間と決めれば、7時間が所定労働時間になります。所定労働時間が法定労働時間を上回ることはありません。もし、上回るように定めていれば(契約していれば)、違法です。

所定労働時間は「本来働くべき時間」ですから、実労働時間とは異なります。所定労働時間が7時間で実際8時間働いた場合は、
所定労働時間・・・7時間
実労働時間・・・8時間

ということになります。1時間は残業時間となります。

残業時間というのは実は俗な言い方で、上記の例で言いますと、この残業の1時間は、
所定外労働時間
という言い方が正しい用語になります。上の例でもし2時間残業した場合、実労働時間は9時間になり、法定労働時間の8時間を超えてしまいます。この場合、残業の2時間は正確に表現しますと、

最初の1時間・・・・所定外法定労働時間
次の1時間・・・・所定外法定労働時間

となります。いずれも契約で定めた時間をオーバーしていますから、「所定外」であることは同じですが、最初の1時間は法定(労働時間)内です。次の1時間は法定外の1時間です。

以上のように残業という場合も2種類あるわけです。法定外になりますと、原則違法なことをやっているわけですから、罰として割増賃金の支払いが必要になります。法定の場合は、いわゆる残業であっても割増不要です。上の例ですと最初の1時間は割増不要ということになります。割増の有無という大きな違いがあります。

労働時間についての話が出てきた場合は、上記のどの意味の労働時間なのか、明確に区分する必要があります。「所定」労働時間の話なのか、「実」労働時間の話なのか。残業時間という場合も「法定内」の話なのか、「法定外」の話なのか。大変面倒ですが、ここがわからないと、社会保険や雇用保険の加入判断基準の意味や、助成金支給要件などの意味がわからなくなります。是非理解しておきましょう。

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posted by 高橋衛 at 18:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 雇用に関する知識

2010年11月16日

あなたの労災

Q:事業主は労働者ではないので、労災保険には加入できないのですね?

A:はい、原則はそのとおりです。労働基準法の考え方からすると、事業主は保護すべき対象ではありません。

ところが、実際には事業主も労働者と同じように働いていることが多く、「形式的には経営者だが、実質は社員と同じ」と言える場合が多いのです。

そのような実態を考慮して、事業主であっても、労災に加入することができるようになっています。これを「特別加入」と言います。原則は加入できないのに、特別に加入を認めるから、特別加入といいます。

特別加入できる事業主は中小企業の事業主に限りますので、新規に創業する方はまず対象になると考えもらってかまいません。いわゆる一人親方(社員のいない建設業の事業主)の方も問題ありません。加入できます。

特別加入するためには、労働基準監督署に行ってもダメで、「労働保険事務組合」に行って手続きをしないといけません。

この労働保険事務組合は、どこにあるかというと、

1.社会保険労務士事務所(すべてではありません)
2.商工会・商工会議所
3.その他の団体(業界団体)


と考えて頂ければ間違いありません。つまり、これらの団体に労働保険や雇用保険の事務を委託しなければなりません。セット販売ですね。

労災保険の補償額は、一般の社員の場合は給与を元に計算しますが、個人事業の場合、事業主に給与はありませんし、法人の場合の役員報酬も自由に決めることが出来ますので、給与をベースに計算するのではなく、自分で補償額を決めます。民間の保険と同じ感覚です。

この特別加入は、一般の社員と同じような仕事をしている場合の事故に対しては保険が下りますが、経営者としての仕事中の事故に対しては下りません。ですから、必ず保険が使えるとは限らないという点には注意が必要です。

もう一つ知って頂きたいことは、法人の代表者で社員が5人未満の場合(当然社会保険に加入しているという前提)、労災事故であっても健康保険が使える場合があるということ(H15.7.1付通達)。労災の場合、一般の健康保険は使えないのが原則ですが、小規模事業者に対してのみ、このような扱いになっています。医療機関もこのあたりは詳しくないので、「労災ですから健康保険は使えません」と言われる可能性もありますが、厚生労働省がこのような見解を出しているのは事実です。知っておきましょう。

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posted by 高橋衛 at 09:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 保険・年金の知識

2010年11月15日

労災保険の加入手続

Q:労災保険の加入手続きを教えて下さい。

A:まず、どこに書類を提出するのか、どこで相談するのかですが、これは労働基準監督署になります。あなたの会社の本店の場所によって管轄が異なってきます(建設業の場合は現場の場所になることがあります)。

管轄はこちらで調べて下さい。

各県の労働局の下に労働基準監督署が位置しています。お住まいの都道府県の労働局からたどっていってくださいね。

さて、労働基準監督署に書類を提出することになりますが、まずいつまでに提出するのかというと、雇用した日から10日以内です。短いですね。すぐに出さなければならないので、事前に予定に入れておきましょう。

提出する用紙は「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」の二つ(参考ページ)。それぞれに説明しましょう(※建設業の方は二元適用といって、手続きが異なってきますので建設業の方は別途説明します)。

保険関係成立届とは、人を雇用したので、労災保険に加入します、という書類と考えて下さい。商号、住所、電話番号、仕事を始めた日、雇用する人数、業種など、必要事項を記入します。労災保険は強制ですから、受け付けないということはありません。監督署は成立届の提出があれば受け付けなければなりません。当たり前です。チェックして「これではダメです。受け付けられません」などということはありませんから、怖がる必要はありません。「お願いなので通して下さい」という種類の書類ではないのです。許可申請ではありません。単なる「届出」です。

労災保険の場合、加入する人の名前や住所などを届け出る必要はありません。労災保険は雇用された人は強制的に無条件で加入したことになりますから、いちいち届け出る必要がありません。届け出ておかないと加入できないという制度ではありません。そういう意味で誰が加入しているかということを労働基準監督署は把握する必要がないのです。


もう一つの概算保険料申告書ですが、これは、労災保険料と雇用保険料を併せて1年分(4月〜翌3月迄の1年)を前払いするための保険料計算書です。労災保険料と雇用保険料(併せて労働保険料といいます)は毎年1回、1年分を概算で先払いして、また翌年これを清算、また翌年分を概算先払いするということを繰り返します。毎月払ったりすることはありません。

保険料は賃金額(額面)に一定率を掛けることで算出します(建設業は請負金額を基準に計算することもあります)。労災保険料率は、ここを見て下さい。

事故の起きやすい危険な業種ほど高い率になります。ですから申告する場合は業種がはっきりしないと計算できないことになります。自分がどの業種に該当するのかわからなければ、教えてくれます。

ですから、例えば11月に新規開業し、人を雇用した場合は、11月〜来年3月までの給料合計額を概算で計算しておかなければなりません。この数字を元に労災保険料と雇用保険料を計算します。誰にいくら、という明細は必要ありません。全体の支払金額合計でかまいません。概算で良いので、正確でなくてもかまいません。
雇用保険料率はこちらを見て下さい。

雇用保険料率も失業者が多く発生する建設業で高くなっていますね。3つの区分があります。雇用保険に加入する人がいなければ当然雇用保険料は払わなくてかまいません(労働者のすべてが雇用保険に加入する訳ではありません)。

労災保険の加入手続きには基本的に添付書類は必要ありませんが、念のため監督署に確認した方がよいと思います。事業を行っていることがわかるような書類があれば尚良いかもしれません。

保険関係成立届、概算保険料申告書ともに監督署に行けば用紙もありますし、書き方も教えてくれますから、印鑑だけ持っていってその場で記入して提出することもできます。記入例はこちら。

保険料は、納付書(A4の3分の1程度の大きさ)を監督署で書いてくれますから、金融機関の窓口に提出して払えば終わりです。

開業時はなるべく支出を抑えたいはずです。ここまでは自分でできる手続きです。どうしてもわからない、役所に行きたくない、などという場合は私のような「社会保険労務士」に依頼することもできます。有料になりますが、これらの手続きに時間を取られることなく本業に集中できますから、余裕がある人は検討されたら良いでしょう。あるいは地元の商工会や商工会議所でも手続きをやってくれます。

別途給与計算については説明しますが、雇用保険料は保険料の約半分を給与から天引きしますが、労災保険料は天引きしません(できません)。労災の治療費用等は原則、事業主が負担すべきものですから、これを社員の給与から天引きすることはできないのです。

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posted by 高橋衛 at 17:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 雇用に関する知識

2010年11月14日

労災保険の加入

Q:人を雇用したら必ず労災保険に加入しないといけないのですか?パートだけでも必要ですか?

A:結論から言うと、必ず加入しなければなりません。パート一人だけでも同じです。

前回は、社員が、業務上の事故によって怪我したり、障害が残ったような場合は原則、事業主(あなた)が自腹でこの療養費や生活費の面倒を見なければならないことを説明しました。但し、原則を貫くと、払えない事業主が出てくる可能性があり、結果として補償を受けられない人が出てきてしまう。これを避けるため、労災保険という制度を国が運営しているわけです。
では、「私は自腹で払うから、労災保険には加入しない。原則通りでよい」という選択をすることは可能なのでしょうか?これはできません。労働者災害補償保険法から見ていきましょう。

第三条  この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。

労働者を雇用した所は、適用事業所、つまり、労災保険に加入することになります。使用するとだけ書いてありますから、人数は関係ありません。一人でも「使用する」ことに違いはありません。労災保険法とペアになっている徴収法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律)では次のように規定しています。

(保険関係の成立)
第三条  労災保険法第三条第一項の適用事業の事業主については、その事業が開始された日に、その事業につき労災保険に係る労働保険の保険関係(以下「保険関係」という。)が成立する。


労働者を雇用した事業主は、事業が開始された日、どういうことかと言いますと、雇用したその日から労災保険に加入しなければならないということです。

ここで「保険関係が成立する」と表現されていますが、これは重要な意味があります。この意味するところは、加入の手続きを取ろうが、取るまいが、人を雇用した瞬間から労災に加入したことになるという意味です。加入手続きを取らなくても、という点が重要です。つまり強制なのです。労災保険に加入したくないと言っても、加入したことになります。手続きをしなくても加入していることになりますから、手続きをしていない場合は、手続きを忘れている、という扱いになります。

手続きをしないとどうなるか?当然労働基準監督署(労災保険は労働基準監督署が担当しています)から「手続きを取りなさい」という指導があります。当然ですね。それでも加入手続きを取らないで、そのうち本当に労災事故が起きたらどうなるのでしょう?復習しましょう。次の選択肢が考えられます。

1.原則に戻って、事業主が全額自腹で負担する。
2.加入手続きを怠っているだけだから、保険は支給され、遡って保険料が徴収される(当然怒られる)


ここを見て下さい。結論としては1.と2.の合わせ技といった感じです。1年間放置している間に事故が起きれば40%、指導を受けていたのにこれを無視している間に事故が起きれば100%、つまり1.の原則どおり、自腹になるわけです。これは大変な金額です。とても商売を続けることなどできなくなります。通常、労災で死亡事故が発生し、事業主に責任があるような場合は、民事上の損害賠償請求訴訟も起こされることが珍しくありません。労災は労災、民事は民事です。当然一千万単位の請求になるのが普通です。

以上の話は、いわゆる正社員だろうが、パートだろうが同じです。労働関係の法律でこの両者を区別する場面はほとんどありません。一律「労働者」ということで保護がされています。パート一人だけ雇うのだから、労災なんてめんどくさい、という方、よく考えて下さい。この一人が業務上の理由で死亡した場合、労災に加入していなければ、あなたが自腹で補償することになるのです。

よく民間の傷害保険(損害保険会社が運営しているもの)に入っているから、という方も見かけますが、監督署は民間に入っているから労災保険に入らなくて良いなどとは言ってくれません。繰り返しますが、強制です。事故が起きれば、調査をし、当然労災保険に加入していたものとして、本人に給付を行い、遡って保険料を請求してきます。民間の保険契約をしているかどうかなど眼中にありません。もちろん費用の40%なり、100%なりを請求される場合もあるわけです。

人を雇用したら、必ず労災加入の手続(正式には「保険関係成立届」といいます)を取ること。これは最低限かつ必須の手続きになります。

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posted by 高橋衛 at 11:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 雇用に関する知識

2010年11月13日

労災保険

Q:労災保険とはどのようなものですか?

A:労災とは労働者災害、つまり社員が仕事をしている途中に怪我をしたり、その結果障害が残ったり、不幸にも亡くなったりした場合の保険、というイメージで構いません。労災保険の根拠となる法律を見てみましょう。根拠法は労働基準法です。

(療養補償)
第七十五条  労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者はその費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。


(遺族補償)
第七十九条  労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の千日分の遺族補償を行わなければならない

「業務上」と書いてありますから、社員が個人的に風邪をひいたりしても、その費用を会社が負担する必要はありません。上記の条文は負傷とか死亡の場合だけですが、障害の場合も同様の規定があります。つまり業務上、怪我したり、障害が残ったり、死亡した場合は、会社がその費用を負担せよと言っています。

なぜか、ということですが、会社は社員を雇用して、働いてもらった結果、利益を得ているのだから、反面、その途中で怪我したような場合は、費用を負担すべきであるという考え方があります。あるいは仕事中に怪我をしたということは、会社がきちんと安全面の管理していないことが原因だ。だから、その責任を負うべきだという考え方もあります。一種の社会保障として、労働者を保護すべきだという考えもあります(いろんな解釈がありますが、深入りする必要はありません)。

いずれにせよ、前提として、会社は社員の安全面にも責任を持たなければならない、という考え方(安全配慮義務といいます)は明確にあります。これは労働契約法という法律にも明記されているところです。

(労働者の安全への配慮)
第五条  使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。


とにかく、社員が仕事中に怪我をすれば、その治療費は、事業主が自腹で面倒を見なければならないということなのです。これが原則です。ですから、健康保険(国保だろうが社会保険だろうが同じ)を運営している主体(市町村や協会けんぽ)としては、その怪我が仕事上のものであるとわかった瞬間、「これは仕事中の怪我なので、ウチの保険は使えません」と言ってきます。つまり基準法で事業主が費用負担することになっているのだから、あなたが自腹で払って下さい、と主張してきます。ここはきっちり線を引いてきます。

ここまでの話でわかると思いますが、ちょっとした怪我ならまだしも、大きな怪我やあるいは最悪死亡事故などになった場合、自腹では払いきれないことになります。結果として中小企業で働いている人は保護されなくなります。ではどうするか?そうです、保険制度を導入すればよいということです。民間の保険と同じです。少ない掛金を払って、いざというときには保険が下りる。この仕組みを我が国は採用することにしたわけです。それが労災保険、法律的には「労働者災害補償保険法」に基づく給付ということになります。保険をやっているのは、もちろん国です。

第二条  労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する。

ここでよく考えて欲しいのですが、労災に加入しないということは、何を意味するのでしょうか?そうです、「労災事故が起きたら、自腹を切って払う」ということを意味します。労働基準法の原則通り、あなたが支払うことになるわけです。社員を雇用したのに労災保険に加入しないということは、自動車を無保険で運転するのと何ら変わらない愚かな選択であることがおわかりいただけると思います。
社員を雇用するということを簡単に考えてはいけません。大きな責任がついて回るのだということを認識して下さい。

次回は労災保険の制度についてもう少し見ていきます。

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posted by 高橋衛 at 08:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 雇用に関する知識

2010年11月12日

36協定

Q:社員を雇用した場合の対外的な手続きについて教えてください。

A:社員を雇用した場合、社内的には雇用契約書や出勤簿、賃金台帳などを作るべきですが、対外的にすべきことはあるでしょうか?やらなければいけないのは次の項目です。

1.36協定の締結と提出
2.労災の手続き
3.雇用保険の手続き
4.社会保険(健康保険+厚生年金)の手続き

まずは「36協定」から説明します。これは必須というわけではないのですが、社員に少しでも残業をしてもらおうと考えている場合には必須です。労働基準監督署に提出する書類になります。

36協定とは何か?ということですが、この「36」というのは労働基準法の第36条が元になっています。

(時間外及び休日の労働)
第三十六条  使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

ちょっと長いのですが、会社側と労働者側が書面で契約し(これを労使協定といいます)、これを監督署に届け出れば、法定労働時間を超えて働かせることができる、といっています。つまり労使で話し合いをして、残業を命じることがありますよ、残業を命じられれば働きますよ、という内容で契約を締結するわけです。雛形や書き方は、インターネット上に沢山ありますから、探してみて下さい。通常A4の用紙1枚です。

法定労働時間についてはまたいずれ説明しますが、原則週40時間とか1日8時間という労働時間の制限のことです。原則、これを超えて働かせることは違法です。しかしながら残業せざるを得ない場合もあるでしょう。そういう場合は、予め、この労使協定を監督署に提出して下さい、ということです。提出しないのなら、原則通り、法定労働時間を超えて働かせる、即ち残業させることはできないということになります。労働基準監督署としては、本当はダメなんだけれども、社員の同意があるのだったら、違法とは扱いませんよ、ということです。免罪符のような役割の書類と考えてもらっても構いません。

割増の残業代を払っていればいいのではないか、と思われるかもしれませんが、残業代を払っていたとしても、労使協定を提出していなければ違法であることには変わりありません

労働基準監督署は36協定を提出せずに残業させているところはないか、日々調査を行っています。当然、残業代を払っているかどうかも併せて調べます。そのときに、36協定を提出していないことがわかると、当然ですが、怒られます(提出するよう指導されます)。

そんなこと大したことではないのではないか、と思われるかもしれません。そんな話、聞いたことがないと思われるかもしれません。実際、創業にあたって36協定のことまで気にしている人はほぼいないと思われます。しかし、36協定を提出せずに残業させれば違法なのです。事業を行っていく中で、違法なことは極力すべきでないことは明白です。税務調査を恐れる人は多いですが、監督署の調査を恐れる人はほとんどいません。しかしながら、「署」と付く役所の調査を軽く見ることは危険です。

事業運営をしていく際の心がけとして、「いつどこから何を言われても大丈夫。何もやましいことはない」という状態を維持していくことは非常に重要なことです。ビクビクしなければならないような状態というのは、結果としてあなたの事業の発展を阻害することになります。

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posted by 高橋衛 at 09:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 雇用に関する知識